ポゴレリチでいっぱい。
本日午後7時からまたポゴレリチコンサート。
終わった……ふう。
ポゴレリチがいっぱい。
ポゴレリッチでいっぱい。
音楽が響いてる。
前半、ブラームス*1とショパンソナタ*2。
後半、ラフマニノフ*3
アンコールにショパンノクターンop55-2とバラキレフのイスラメイ。
独特のテンポ、極上のピアニッシモ、壊れそうなフォルテ。
ブラームスはゆっくり……たどたどしいくらい。
音の歩みをひとつひとつ踏みしめてることを確かめながら、進む*4。
ラフマニノフの曲は、普通どれを聴いても、音の揺れ方、流れ、響きから
「あ、これ、ラフマニノフっぽい」って感じるのだけど
それがきこえてこなかった。
音の流れ、よりも、音の響きそのものになったラフマニノフ。
響きがうつろう、変化し、重なり、やがて消える。
怒濤のようにわきあがったり、ゆらゆら、予想できない動きで変化したり*5。
アンコールで何をひくかしらん?
エリーゼ? それともノクターン62-2をまた弾くかな……? などとなんとなく思ってたら、
ぽーんと響くB♭にふいうちされる。
あっ、この音はショパンノクターン55-2だ。
かつてポゴレリチがコンサートで弾いたり、CDに録音したりしたなかでも
最もスキな曲のひとつ。
若い頃の演奏とはまた全然違う、ノクターン、でも
「ポゴレリチ」ならではの、ノクターン。
天で鳴るような高音の極上の響き、
そして深く鳴る低音部、
ゆれながらさまようような左手のアルペジオ、
ラスト近くの、跳ねるようなフォルテ和音。
目が痛くなって困った。
ポゴレリチが見えない、でも、音は響いてくる。
さまざまな想い、感情がフラッシュバックする。
そしてラストに、12日でも弾いた
バラキレフのイスラメイ。
圧倒的な響きとリズム。
終演後、帰りの地下鉄に乗ってるアタマの中にずっとずっと
イスラメイ、のテーマが繰り返し鳴り続いていました。
しばらく、頭の中はポゴレリチの音で、いっぱい! です。
この余韻を、めいっぱいたのしみたい。
いまはまだ、ちょいと胸もきゅうっと苦しくて、
なんだか若き日のコイワズライみたい。
永遠のプラトニック=片思い、をもう四半世紀も楽しみ続けています*6。
*2:2番、葬送
*3:楽興の時op16
*4:ショパンのソナタについて、書き忘れていますが…… まだどう表現していいものやら。2楽章の和音連打地の底から鳴るような。3楽章の葬送のテーマは現れるたびに表情を変えて……低いテーマが強調されたかとおもうと次は高く鳴る音がきこえ、ぞくぞくっと。ラスト墓場の上を吹く風、と表現されたという終楽章、ユニゾンの音の波が流れ吹き荒れる、最後のほうで深い低音が、数音、地底から鳴り響き、記憶の底に刻まれる、そして流れがすべて終わり音が消える、消えてしまう、わたしはわたしのなかのコトバをすべて消してしまいたい、と思った
*5:ずいぶん、長くかかったらしい
*6:現実の恋たちのほうが、うんと短いな〜 「成就しない」のが、長続きの秘訣でしょうか