イーヴォ・ポゴレリチのマスタークラスにいってきました。
軽井沢は氷点下、雪が凍っていました。
ホール前の池の表面にも氷が。
ぽごれりちマスタークラス、みてきました。
それもかなりの至近距離で。
SonyMusicFoundation|公益財団法人ソニー音楽財団
前半、7人の若き学生ピアニストさんたちの演奏。
中学生の女の子*1から20代(たぶん)の男女が、
バッハ、ショパン、シューベルトにブラームスをひとりずつ弾いていく。
ポゴレリチは、梶本事務所のヒトらしき女性と
奥様らしきヒト(確認したわけじゃないので)と、通訳さんと、
客席へやってきました。
わたしは前から6番目の真ん中あたりだったのだけど、
ポゴは5番目に着席。
2メートルくらいしか離れてない。
こ、こんんな至近距離に、いるなんて、初体験でドキドキ*2。
ポゴレリチはずっと、楽譜を手に演奏を聴いてました。
曲の合間に赤い扇子を取り出して、広げたり……*3。
曲の合間に、低い声で何かとなりの席のヒト*4に話しかけたり。
若きピアニストさんは、みなさんとても聴き応えありました。
う、うまいです、とくに、あの女の子、中学生の子のシューベルト、音楽的に豊かで魅了されました*5。
後半、昼食休憩90分の後にマスタークラス。
会場に戻ったらばちょうど、ステージにはピアノが2台用意され、
その演奏椅子の背後に簡易椅子が並べられている。
ど、どうやら希望者はステージ上で聴講できるらしい。
いつもののんびりはどこへやら気がついたらステージによじのぼり、
椅子を確保。
最前列は、生徒さんたち用とのことで2列目、ポゴ寄りに。
いやあ……我ながらびっくりしました。
手を伸ばせば届きそうな、
1メートルちょっとのところにポゴレリチ。
あまりに近すぎて、背中ばかり……という難点もありましたが
こんな近くで彼のピアノが聴けるなんて、もうありえないでしょう。
ポゴレリチはひとりずつ、一曲ずつていねいに、
小節ををとりだし、ゆっくり噛み砕くように、分析しつつ演じつつ。
よく話し、つねに笑顔で、手と、カラダ全体をつかっての講義。
(ちょっとこの辺、普通じゃない状態で聴いてたので、文章乱れます、ご容赦)
バッハの曲では、拍子の重要さを指摘。
33小節目*6でテンポがアレグロに変わるポイントで
数を数えつつ正確に弾くことを強調。
ジョーク? も交えつつ……
「テンポ、拍子は重要です、どんなレコード会社と契約しても大事(確かこんな訳でした…〜)」
などなど、こんなによくしゃべるヒトだったとは、いまだかつて知らず。
83年来日以来、コンサートにはちょくちょく行きましたが
コンサートでは全くしゃべりませんから……(あたりまえ? )
サントリーでのコンサートでは、ポゴは楽譜をおいて譜めくり付きで演奏したのですが*7それについて一言。
「楽譜が読めることを、みせたかったのです」
生徒さんに「ここで重要なのは、左手か右手か」と質問して「左」と答えるのをきいて一言。
「当たりです! おめでとうございます。洗濯機があたりました…と、よくテレビのショーでありますよね。」*8とかなんとか(ホントか?)
ノンレガート奏法や、立って弾いて指の筋肉をつけるやりかた、手のポジションの話など、
いろいろ実演してみせてから「練習してください。いっぱい練習すれば……そのうち……自然にできるようになります、ずっとレッスンすれば……
評論家にいい批評をもらえるようになるかもしれませんよ」*9〜
ブラームスのインテルメッツォ117ー2の冒頭部分、
多層的音色を弾きわける音の圧倒的なうつくしさに、思わずじ〜ん。
こんな近くで、彼のピアノが聴けるシアワセに泣けそうになる。
若い頃、何度かポゴレリチの夢をみたことをふとおもいだした。
そうだ、この距離だった。
夢に出てきたポゴレリチも若い頃……だった*10、
誰もいないステージのグランドピアノを
わたしだけのために弾いてくれた。
目が覚めて「夢かあ〜」とかなりガッカリしたことを覚えてる。
その、距離だった。
夢って実現、するんだ*11。
*1:一年生〜可愛いい……のに、とても表現力豊かなシューベルト!
*2:奥様らしきヒトは、とてもきれいなはっきりした顔立ちの、芯の強さを感じさせる風貌。ポゴレリチと似たタイプのようにもみえました。ブロンドの髪をきゅっと後ろでひとつ結びにして、濃紺のレースのリボンを髪留めに。耳には真珠(かな?)のピアス。カラフル(でも上品な色合い)の刺繍の上着
*3:いっぺんだけですが
*4:たぶん事務所関係のヒト
*5:髪はショートカット、白いシャツに紺のベスト、赤いタータンチェックのスカート、紺のハイソックスに黒い靴……カワイイ〜
*7:プロの奏者がソロコンサートで譜面を見ながら演奏することは、希有なこと。わたしもポゴレリチが楽譜を置いて演奏するのは初めてでした。が、ずっと楽譜を見ながら弾いてるというよりは、弾いてる音楽の「居場所」を確認するために、置いてるような感じでした
*8:すいません、わたしの表現力不足で、あのなんともいえないこそばゆい感じがうまく描けませんっ
*9:会場、笑いに包まれる(昨年のニューヨークコンサート後、かなりの酷評がニューヨークタイムスに掲載されている)。
*10:髪がもじゃもじゃで、痩せていて、美青年だった80年代のポゴちゃん、ああ、わたしも若かった
*11:え〜っと、決してわたしのために弾いてるわけじゃないし、彼の風貌も全く変わってしまったが(わたし自身もだ!)、それにしてもこんな目の前で、ホンモノのポゴレリチがピアノを弾いてるなんて、ああ、生きていてよかったよ。と、帰りの新幹線でうるうるする。そして、終わってしまったさみしさもじっくり味わいました。ブラボー〜人生っ