夜は、ランラン

風が強い。
中野坂上のほうまで歩く。
バスに乗って、オペラシティに。
中国のピアニスト、ランランのコンサートにでかけた。


す、すごかった。
すばらしい……絶句
あんなに歌う「ピアノ」、聴いたことがない。
豊かな音量と、表現力。
音の情景が目に浮かぶ。


そして……ランランって、
かっこよかった。
黒いビロード風の上着とグレーのパンツで出てきたとき、
あれ、スマートになった? とおもった。
より引き締まった印象。
髪も伸びて、軽くウェーブがかかっていて
テレビでかつてみたときより「おしゃれ」な感じ。
かわいくてかっこいいヒトじゃないか、と思った。
ごめんなさい、いままで、どっちかっていうと
ビジュアル的には、キモカワイイ系かとおもってました。
ごめんなさい、もうそんなことおもいません。

席は舞台向かって右側のバルコニー席。
全く鍵盤はみえないが、表情だけはよ〜く見える席だった。
とろけそうな表情で弾くランラン。
うたうように弾くランラン。
彼が弾きつつ、ふと目線をあげると、目が合うようなきがして、ドキドキ。
またまた妄想力が……。


このひと歌手だったら、すばらしい歌声で
絶妙なテノールを聴かせてくれそう。
プログラムは、シューマンのアベッグ変奏曲、ハイドンソナタハ長調シューベルト幻想曲さすらい人。
タン・ドゥン*1水彩による8つの思い出、ショパンノクターン27-2、リストのドン・ジョヴァンニの回想…。
シューベルトあたりから、本領発揮、という感じ。
ノリノリで圧倒的。
音の色彩が豊か。
タン・ドゥンの曲は、風や光の情景が目に浮かぶよう。
ちょうど、紹介文を書いた本とシンクロした。
この本も、鮮やかなシーンが目に浮かんでくる。

里山の言い伝え―お天気小母さんの十二ケ月

里山の言い伝え―お天気小母さんの十二ケ月

妄想力がたっぷりあるってのも、シアワセなことだな。


アンコール曲も充実。
二胡奏者のヒトがいっしょに出てきて
「He is my father.」と言った時はびっくり。
親子演奏が聴けてすごくトクした気分。
なんてもりだくさんなんだろう。


あんなにパワフルに弾いたのに、いや、こういう
サービス精神旺盛なタイプのピアニストさんは
弾けば弾くほどますますパワーアップするのだろうか、
演奏後にはサイン会のおまけつき*2
けっこう若い女の子たちのファンもいて、キャーキャーうれしそう*3
サインする様子をじ〜っと見守るうち*4
サインする手をみてるうち、白くてしなやかそうな手に触ってみたくなる。


販売してるCDをみたら、ラフマニノフの2番があったので
思い切って買ってしまった*5

ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番

ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番

なが〜い列の最後尾につく。
まあ、ウチまで歩いても40分くらいだし、いそがないし。
この機会を逃したらもう手に触れないかもしんないし。


ぎりぎり10時近くなってしまった。
はじめは座ってひとりひとりに対応してたランランさんも
最後のほうは立ってサインをこなしてる。
CDにサインをもらい、ちょっと手をだしてきゅっと握ってもらった。
やわらか〜くてふわっとした手だった*6
ふう……堪能。


外に出たら風が相変わらず強い。
バス停をみたら、10時過ぎでも10分おきにバスがある。
オペラシティから、中野行きのバスで帰る人って
あまりいないだろうな……。


うっとり余韻をたのしんで
バスに乗ったらすぐにまた日常。
でも夜のバスって、なんかきれい。

*1:中国の作曲家

*2:ケマル・ゲキチもそうだった

*3:ランランさん、まんざらでもなさそう

*4:ちょっとストーカーっぽい態度

*5:指揮はゲルギエフ……なんと濃い組み合わせだろう。

*6:そんなに大きそうには見えないが、ラフ2の冒頭を聴いてみたら、ちゃんと和音をいっぱつで弾いてる、ってことは指が長いのかな?