なにかしらなつかしい記憶

ふとたちどまって
あいかわらず とほうにくれて
変化していく 空 色 風を 感じながら
ころりと部屋のなかで 
ころがっていると なにかしら なつかしい感情


ほんのり熱された空気が ゆっくり動いていくときに
ひきおこされる 記憶 
感覚の 記憶


雨がふったあとの 風や木の音 においのような
いつだったのかは忘れてしまったけれども
たしかに 感じていた 感覚を
覚えていること 忘れていないことを 思い出しながら
うとうとしているこの 瞬間が
途方もなくかけがえがないようにおもえて
幸福感につつまれていた


この瞬間も 過ぎていく 消えていくのだと
わかっているからせつなくて
でも
これはもしかしたら 永遠のものかもしれないと
どこかで 感じてもいる のだ


とおくで 雷
とおくで 雨
風がその気配を そっと この
閉ざされた部屋のなかにも 運んでくる 不思議