愛について*1


言葉に縛られてうごけない
たとえば「愛」
どんどんずれる男のうしろの顔
どんどん重くなり固くなっていく子どもの足


あたしときたらまだ手のひらなんか子どもみたいにすべすべで
がさがさで恥ずかしいと大声で笑うご婦人の前でもっと恥ずかしくて曖昧に笑っている
だから
「愛」なんてできない
欲望なら 自信あるんだけど


毎日毎日ガマンなんかできないよう といいながらガマンする
依存しあうのが 凡人の定め それが「愛」なら
万能包丁でまるごと大きくなりすぎたカボチャ切るみたいにして
ざくざく乱切りしたい

「愛」の煮物は美味しすぎて
ドンと胃にもたれることでしょう

(1991年 1月29日)